●術前診察で麻酔科が確認していること

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今回は麻酔科医として術前診察で患者さんや家族に確認していることをまとめます。

術前診察で確認すること

①氏名(読み方も確認する)

②身長・体重・BMI

③病名(体の部位、左右の確認)

④手術方法(どのようにアプローチするのか(例.開腹or腹腔鏡))

⑤既往歴(全身麻酔歴の有無と術後のトラブル、血縁者の全身麻酔での悪性高熱症の有無)

⑥併存症(合併症の有無も確認)

⑦現在処方されて服用している薬の有無

⑧喫煙歴(空咳・痰がらみなど自覚症状なども確認)

⑨アレルギーの有無

⑩運動対応のについて自覚症状の確認

⑪気道確保困難リスクの確認

⑫術後嘔吐(PONV)のリスク

⑬ASA-PSの評価(患者リスク、手術リスクの有無)

⑭麻酔方法の決定

①氏名(読み方も確認する)・②身長・体重・BMI

術前診察は、施設によっては外来で全ての症例を行うこともありますが、手術前日に病棟にいる患者さんに麻酔科医が伺うことが多いと思います。

まずは患者取り違えを起こさないために、患者さんのお名前を”読み仮名”まで確認します。

また、事前に身長・体重・BMIを確認し、実際にお会いした時に1⃣マスク換気が可能な顔周りか2⃣高MBIの場合は胃内容物の逆流リスクはないか、なども確認します

③病名(体の部位、左右の確認)

こちらも、左右の間違えが起こることを防止するために大切です。

稀に手術申し込みが左右逆の場合も起こりえるので、1⃣患者さんに左右の確認、2⃣事前の画像検査データで手術部位の確認、を行うと左右取り違えのリスクが低くなります。

④手術方法(どのようにアプローチするのか(例.開腹or腹腔鏡))

手術方法の確認は、患者さんの手術への理解度が分かります。それにより麻酔の説明の仕方も、少し詳細に行うか、優しい言葉でかみ砕いて行うか方針を決める手助けになります。

⑤既往歴(全身麻酔歴の有無と術後のトラブル、血縁者の全身麻酔での悪性高熱症の有無)

麻酔に関しては、特に悪性高熱・術後の嘔気嘔吐(PONV)に留意します。また、何度か麻酔の経験がある患者さんには、過去の麻酔歴から「ここが辛かった、これはしないでほしい」など要望があれば確認しておくとよいです。全ての要望にはかなえられませんが、改善できる点を把握して実行できると患者さんの満足度が上がります。

また、麻酔に限らず、過去の既往歴は聴取しておく必要があります。

例えば交通事故後の場合は、長時間同じ姿勢になった場合辛い体勢はないか・首は後ろにそらせるか(頭部後屈の確認)・痺れや麻痺は残存していないか(脊髄損傷の確認)、など確認する必要があります。

他にも手術歴があれば、麻酔の前後で変化がないか確認します。(例、食道がん術後で食後に胃酸がこみ上げる頻度が増えた・腰椎ヘルニアで金属の器具を留置してる(脊椎固定していると部位によっては硬膜外麻酔・脊髄クモ膜下麻酔が困難になる))

これらの情報は執刀する科の先生のカルテも参照しますが、患者さんから「入院したり、手術したことは今回が初めてですか?前にもありましたか?」と確認する必要があります。

⑥併存症(合併症の有無も確認)

主に確認することは、高血圧・糖尿病・喘息・虚血性心疾患の有無です。

高血圧に関しては普段の血圧(入院してからの血圧)を把握しておくと、手術中に維持する血圧の目安が分かります。

糖尿病に関しては、患者さんの随時血糖・HbA1c・合併症(網膜病変・腎機能の悪化・神経障害)を家訓人しておきます。

喘息に関しては、最終発作・普段の治療方法(内服+/or吸入)を確認することで、手術当日の入室前に吸入してもらう必要があるか・吸入麻酔薬の選択に関係してきます。また、喘息がある場合は鎮静導入で用いるイソゾールは原則禁忌となっています。

虚血性心疾患に関しては、患者さんの自覚症状(胸部痛など)と合わせて術前検査(心電図・心エコー)を確認し、精査が必要・手術を延期して心疾患の治療を優先すべきか検討します。

他にも、自己免疫性疾患などでステロイドを使用している場合は、1⃣ステロイドの種類・強さ、2⃣ステロイドカバーが必要か検討します。

これらの情報も執刀する科の先生のカルテも参照しますが、患者さんから「定期的に通院している病院はないか」と確認する必要があります

⑦現在処方されて服用している薬の有無

患者さんが入院すると、定期的に服用している薬に関しては「持ち込み薬」として看護師さんや薬剤師さんがカルテ上に記載してくれますが、患者さんに「定期的に飲んでいる薬はないか」確認する必要があります。

特に大切なのは抗凝固薬です。手術によっては事前に主科の先生が中止してくださることもありますが、中止できない抗凝固薬もあるので患者さんに直接確認することが重要です。

⑧喫煙歴(空咳・痰がらみなど自覚症状なども確認)

患者さんに喫煙歴があるか、ある場合はいつから・1日何本喫煙しているか確認します。また、喫煙歴がある場合は現在の空咳・痰がらみの自覚があるかの確認も必要です。

この情報は、喫煙歴がある場合は痰がらみが手術中もおこるため、麻酔中の呼吸器の設定や手術中・抜管前の唾液吸引の方法に影響してきます。

喫煙歴がない場合は以下でも述べますが、手術後の嘔吐・嘔気(PONV)リスクが高くなるので、予防のためにも聴取が必要です。

⑨アレルギーの有無

食べ物や薬剤でのアレルギーの有無を確認します。

食べ物に関しては、卵の黄身・魚卵・大豆製品にアレルギーがあれば鎮静薬のプロポフォールは原則禁忌となっています。

薬剤では主に抗生剤や造影剤が該当するのでアレルギーを起こす薬剤は禁忌となります。

また、ゴム製品に触れて痒みが誘発されないかも確認し、該当する場合は手術中ゴム製品は使用しないように手術室のメンバーと情報共有します。

その他にアレルギーではありませんが、アルコール綿の消毒で皮膚が発赤しないか、長時間テープを張っていて皮膚が痒くならないか確認します。

⑩運動対応のについて自覚症状の確認

手術をうけると手術による侵襲以外にも、全身麻酔で用いる様々な薬剤・人工呼吸管理により全身への負担がかかります。

腸緊急の手術を除いて、手術を受ける患者さんに手術侵襲から回復する体力があるかの1つの目安になります。

患者さんに「階段を2・3階分上り下りして同年代の人と比べて息が上がらないか・胸が苦しくならないか、日常生活(洗濯・料理・掃除・入浴・着替え)をして息が上がらないか・体が疲れないか」を確認します。

⑪気道確保困難リスクの確認

研修医中に指導医の先生から、気道確保できるかどうかが患者さんの生命にかかわる・挿管は出来なくてもマスク換気は行えないといけない、と教わりました。

術前診察では、3横指分の開口ができるか・この時に口蓋垂は見えるか、動揺歯はないか、首は後ろにそらせるか、の3点を主に確認します。

その他にも下顎回りを確認して、マスクフィットの際に下顎が保持しやすいか・マスクを持った時に下顎が上げやすいか(下顎挙上)を確認します。

総入れ歯の場合は、手術時には入れ歯を外してもらうため、術前診察時よりも頬がこけてマスクフィットが難しくなる可能性を考慮する必要があります。

⑫術後嘔吐(PONV)のリスク

PONVリスクの因子として、若年・女性・乗り物酔い/PONVの既往・非喫煙、が挙げられます。

これらを確認することで、嘔気予防(吸入麻酔の代わりにTIVA、ドロペリドールの使用検討など)を検討します。

⑬ASA-PSの評価(患者リスク、手術リスクの有無)・⑭麻酔方法の決定

この2項目に関しては術前診察前に主科の先生のカルテや検査データなどから予測しておきますが、術前診察を行うことで麻酔方法が確定してきます。

そのため①から⑫までの項目が参考になります。

最後に

今回はとても長くなってしまいました。

今回まとめた術前診察の項目はあくまで一般的な手術麻酔に関することなので、その他に聞くべき内容がある手術麻酔がある場合には別途まとめていこうと思います。

また、今回は術前診察についてまとめたので、次回は術前診察後に行う患者さんへの麻酔の説明についてまとめます。

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