●挿管チューブのずれ 症例を通じて学んだこと②

麻酔科医は挿管チューブが声帯を通過したことを喉頭鏡を使って目視で確認します。

挿管チューブが声帯を通過した後、カフチューブにエアシリンジで空気を入れて膨らませ、カフが膨らむことで挿管チューブがずれるのを防ぎます。

手術中、カフ圧が減少し挿管チューブがずれるのを防ぐために持続のカフ圧計をつけて一定の圧を維持することも行います。

このようにカフ圧をしっかりかけていても外力からの影響には適いません(カフが膨らんだ状態で、無理やり挿管チューブを押したり引いたりすると、挿管チューブは動きます。カフが膨らんだ状態で動かすことで気管や声帯を気付つけることになるので、抜管前は必ずカフ圧を”0”にする必要があります。)

体位変換後に挿管チューブが奥深くに入り込んで無気肺を来した症例

今回体験したのは、左下葉肺癌術後の右肺癌の手術でした。右が患側となるため、手術中はDLT(ダブルルーメンチューブ)を用いて左肺換気を行っていました。左下仰臥位に体位変換し片肺換気後も1回換気量やSpO2・EtCO2も良好で酸素化や換気は問題なく手術中は経過していました。

問題は手術終了後、手術後のX線撮影のために左下仰臥位から仰臥位へ体位変換した時に起こりました。

X線撮影終了後、突然SpO2が低下し、一回換気量がそれまでの1/2まで減少しました。これらの原因は、①片肺換気から両肺換気へ変更後青カフの圧を解除していなかったこと、②体位変によって挿管チューブが奥へ移動し、残存し唯一機能していた左上葉を閉塞させ無気肺を来したことが原因でした。

解決策

①に関しては、片肺換気から両肺換気になった時点で青カフを抜いて、患側の右肺も換気している状況にすべきでした。

②に関しては、A-1.体位変換時に挿管チューブと下顎を一緒に持って挿管チューブのズレを最小限にする、A-2.挿管チューブを固定するテープを通常の挿管チューブよりも固定力が強いものへ変更する、という2点が挙げられる。

まとめ

・挿管チューブカフ圧は20-30mmHgで保つとよい

・片肺換気終了後は、青カフを開放(カフ圧を”0”に)する

・体位変換時は挿管チューブがずれないように、挿管チューブの口角部分と下顎をもって固定する

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