●手術前の画像確認 症例を通じて学んだこと⑤

手術前に行う患者さんの画像確認の内容をまとめます。

画像チェック一覧

①X線 気管の狭窄の有無

②X線 肺野の透過性

③X線 心拡大の有無(CTRを計測)

④X線 胸水の有無を確認(CPAを確認)

⑤X線 脊椎の変形(側弯・圧迫骨折の有無)

⑥CT 肺野の確認(COPDの有無、肺転移の有無、胸水の有無)

⑦CT 心臓の確認(心嚢液の貯留の程度、冠動脈の石灰化の程度)

⑧CT 肝臓の確認(脂肪肝・肝硬変の程度、肝転移の有無)

⑨CT 胃食道接合部の確認(横隔膜より頭側にあるか=食道裂孔ヘルニア=誤嚥リスク+)

⑩CT 腎臓の確認(腎臓の萎縮の有無、腎盂の拡張の有無)

⑪CT 大血管の石灰化の程度

⑫CT 腫瘍の存在する部位の確認

これら12項目は皆さんが普段やっていることかもしれませんが、今回は⑫について教わり大変勉強になったのでこちらを中心に解説します。

⑫腫瘍の存在する部位の確認

腫瘍の存在部位は、主に1⃣血管の上、2⃣腸管の上、3⃣気道の上、にある場合に麻酔導入に気を付ける必要があります。

1⃣腫瘍が血管の上にある場合

腫瘍が血管の上に存在する場合、麻酔導入後(主に筋弛緩薬投与後)に腫瘍の周りの組織が筋弛緩により腫瘍を支えられなくなります。

重力で落ちた腫瘍が血管を圧迫し、循環血漿量が減少し、麻酔導入後に血圧が普段の導入より更に低下します。

対策:導入で使用する鎮静・鎮痛薬の量を減らす。

2⃣腫瘍が腸管の上にある場合

腫瘍が腸管の上に存在すると、腫瘍に圧迫されることで腸管の血流は正常よりも減少しています。しかし手術中に腫瘍が取り除かれ、腫瘍の圧迫が解除されると腸管の血流は改善され血液は腸管へ流れていきます。

その結果、循環血液量が腸管へ移動し、また末梢血管抵抗も低下するため、血圧が下がります。

対策:術野を観察し、腫瘍が周りの組織から剥離され移動されることが予測されたら、昇圧剤の投与を検討する。

3⃣腫瘍が気道の上にある場合

腫瘍が気道の上にある場合、まず患者さんが仰臥位になった時点で重力により立位・座位と比較して気道が圧迫されます。麻酔導入前の仰臥位での気道確保が可能か確認します。

麻酔導入後(主に筋弛緩薬の投与後)に腫瘍を支えている組織が弛緩し、さらに気道は腫瘍により圧迫されます。

対策:気道確保困難を想定して、エアウェイの準備やマックグラス・エアウェイスコープ・気管支ファイバーなど使用できるデバイスの万全な準備をする。

まとめ

手術前に患者さんの画像を見ることで、手術中に想定されること、それらに対する対策をしておくと手術中も安全に麻酔維持をできます。備えあれば患いなし!ですね。

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